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9月28日まで! 戦後80年 戦争の記憶『戦中・戦後を生きた横浜の人びと』特別展開催中!

1 特別展チラシ

 戦後80年。戦争のことは語り継がれにくくなった昨今、当時の資料が現存しているのをご存じでしょうか。横浜都市発展記念館(横浜市中区、館長:西川武臣)で特別展を開催しています。

 現在「戦後80年 戦中・戦後を生きた横浜の人びと」が開催中。残された資料と人びとの記憶から横浜の戦後80年を紹介しています。同館の西村研究員は「戦争の記憶を後世につないでいく」ことを目的とし活動を続けています。今回初の展示も多数あり寄贈品も含め同研究員が汗をかいて集めたものが多数。本特別展の特徴と見どころについて伺いました。

➀神奈川区六角橋の山室家に残る戦時ポスター

 旧家である山室家には、戦時期のポスターが多く保存されています。金属供出や出征兵士および戦没兵士遺族の援護をテーマとしたポスターもあり、戦時において地域に求められた役割は多様であったことが把握できます。

 これらのポスターの裏面には、地域の出征兵士や隣組員の一覧、配給品の分配表など様々な情報が書き込まれており山室氏が地域の運営に尽力していたことがうかがえます。ポスター表・裏とも大変貴重な資料と言えます。

 

➁画家が描いた空襲直後の横浜※新規寄贈資料

 中区の老舗花屋「花松」の3代目の店主であった横山清治氏は画家でもあり、横浜大空襲(1945年5月29日)直後の様子を描きました。当時の様子をリアルタイムにとらえた他に類例のない資料をご覧ください。

 戦時中の日本では空襲後の焼け野原を記録することは厳しく制限されていました。その中、人びとの様子や変わり果てた横浜の風景など残した大変貴重な資料と言えます。

 

➂横浜中央電話局 局員の空襲時の資料※初公開

 横浜都市発展記念館と横浜ユーラシア文化館が入る建物は、1929(昭和4)年に、横浜中央電話局の局舎として建てられた歴史的建造物です。当時電話局には多くの女性局員が24時間交代制で勤務していました。

 電話局で勤務していた平井冨貴子氏が横浜大空襲の様子を克明に記録した日記が発見され展示しています。平井氏は大空襲の際、山下公園に避難し難を逃れました。そのとき摘んだクローバーが日記に挟んでありました。

 

④横浜の戦争孤児を保護した唐池学園資料※初公開

 横浜に多数存在した戦争孤児たちの保護には、公的機関のみならず民間の施設が大きな役割を果たしました。戦争孤児を保護した唐池学園の資料をご覧ください。

 唐池学園は戦後間もない1945年(昭和20年)10月28日に藤沢市の郊外に設立されました。ヤミ市のあった野毛などで浮浪する多くの孤児たちを保護。時には脱走して野毛を目指す孤児もいましたが、当時の職員は野毛まで探しに行き、保護したという記録が残っています。

 

⑤「GIベビー」を保護した聖母愛児園※一部初公開

 多数の占領軍兵士が駐留した横浜では、兵士と日本人女性との間に多くの子どもたちが生まれました。望まれない妊娠や兵士が母子を残して帰国したケースなどもあり、養育不能となって困窮の際に立たされた子どもたち「GIベビー」が多く存在しました。

 その子供たちを救ったのが聖母愛児園の人々です。聖母愛児園のシスターは医療にも長けており子どもたちを治療し勇気づけたと伝えられています。

 

⑥聖母愛児園分園と「ファチマの聖母少年の町」の卒園生、青木ロバァト氏とマリ氏※初公開

 青木ロバァト氏が7歳の時、米国人父が突然帰国してしまい、残された家族は困窮し母ゆき氏はロバァト氏を聖母愛児園分園、妹のマリ氏を聖母愛児園に預けました。

 マリ氏はその後、養子に出されましたが、養子先はロバァト氏に知らされず、生き別れの状態となっていました。横浜都市発展記念館ではロバァト氏の依頼を受けマリ氏の行方を捜査し、聖母愛児園の工藤則光氏の協力を得てマリ氏の養子先に関する資料を発見しました。その後、NHKの取材でマリ氏が養子に出たすぐあとに病気で亡くなっていたことが判明。ロバァト氏は深い悲しみに包まれながらも「本当にはっきりしてよかった。モヤモヤがなくなったから」と述べています。

 

◆関連企画のご紹介

 1.展示解説 調査研究員が企画展の見どころを解説します!

   日 時:8月3日(日)、11日(月・祝)、15日(金)、31日(日)、9月14日(日)、23日(火・祝)、27日(土)、28日(日) ※いずれも午後2時から 45分程度

   会 場:横浜都市発展記念館 企画展示室

   参加費:無料(特別展観覧券が必要です)

   申 込:事前申込不要。当日直接会場にお越しください

 

 2.関連記念講演会 「当事者が語る『GIベビー』の記憶」

   講演者:青木ロバァト氏(聖母愛児園分園ファチマの聖母少年の町卒園生)

   日 時:2025年9月15日(月・祝) 午後2時~午後3時30分(開場午後1時30分)

   会 場:横浜情報文化センター 6F情文ホール

   定 員:先着200名  参加費:1,000円

   申込方法:横浜都市発展記念館イベント申し込みページよりお申し込みください。

   9月15日(月・祝)】特別展関連記念講演会「当事者が語る『GIベビー』の記憶」【横浜都市発展記念館】 | 横浜情報文化センター 情文ホール

  ※「関連記念講演会」は有料のアーカイブ配信も行います(購入方法など詳細は追って当館HPでお知らせします)

 3.関連展示「動画公開 当事者が語る戦争被害」の開催 特別展に関する当事者の証言映像を公開します

   会 期:2025年7月19日(土)~9月28日(日)

   会 場:横浜都市発展記念館 1Fギャラリー(入場無料)

 

 特別展「戦後80年 戦争の記憶 ~戦中・戦後を生きた横浜の人びと~」【基本情報】

  ・会 期:2025年(令和7)年7月19日(土)~9月28日(日)

  ・開館時間:午前9時30分~午後5時(券売は午後4時30分まで)

  ・休館日:毎週月曜日(祝日の場合は翌平日)

  ・主 催:横浜都市発展記念館・横浜開港資料館(公益財団法人横浜市ふるさと歴史財団)

  ・共 催:横浜市教育委員会

  ・後 援:横浜市国際局・朝日新聞横浜総局・神奈川新聞社・東京新聞横浜支局・日本経済新聞社横浜支局・毎日新聞社横浜支局・読売新聞横浜支局・産経新聞社横浜総局・NHK横浜放送局・tvk・FMヨコハマ

  ・協 力:横浜市史資料室 横浜ユーラシア文化館

  ・観覧料:一般800円、小中学生・市内在住65歳以上400円 特別展開催期間中、毎週土曜日は小・中・高校・大学生は無料

 

 特別展を通じて改めて今後安心して暮らせる世の中になればと切に想いました。わずか80年前は戦争をして多くの人びとが悲しみ絶望の淵をたどっています。今、この瞬間にも世界のどこかで戦争が起き命を落としている人がおり、その傍らで悲しみに暮れる家族がいます。今こそ一人ひとりが戦争に向き合い考えるときです。日本だけでなく世界中の誰もが安心して暮らせる世の中を創り将来を担う子どもたちのことを考えるきっかけになればと願います。

 

 

   

   

 

 

 

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