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横浜市は昨年4月に設置した横浜市精神科病院虐待通報窓口への通報状況をまとめ、6月13日、初公表した。精神科病院をめぐっては全国的に院内の障害者への虐待事案が後を絶たず、市では昨年度1年間で同窓口に121件の通報があった。市は「人権擁護に関する研修の実施状況を病院に確認するなど、引き続き対応していきたい」としている。
通報窓口設置の背景には、昨年4月の精神保健福祉法の改正がある。同法改正により、精神科病院の業務従事者による虐待を受けたと思われる障害者を発見した人は、速やかに都道府県や政令市に通報することが義務付けられた。全国的には、かつて入院中の障害者が看護師らからの執拗な暴力の末に死に至った事案もあり、虐待の未然防止や早期発見への取組の推進が課題となっている。
市によると、対象は市内全28カ所の精神科病院で、通報できるのは院内で虐待されたと思われる障害者を発見した人のほか、虐待を受けた本人。集計の結果、発見者による通報・相談は21件、虐待を受けたとする人からの届け出・相談は100件に上ることが分かった。今年度に入ってからもすでに通報があった。
通報を受けた際は、市職員や精神保健指定医などが協議を経て虐待の有無を認定。昨年度は121件のうち、虐待事案は10件、虐待ではないと判断された事案は105件、「現段階では疑いの状態」が6件だった。虐待の被害者は女性6人、男性4人。虐待を行った職種は看護師が8人と最も多く、次いで准看護師が2人、医師、看護助手が共に1人ずつで計12人と公表された。
虐待行為別では「患者から暴力を受けたことに対し、職員が殴打した」事案を含む身体的虐待が5件、患者を強くとがめるなどの心理的虐待が4件、介助が必要な患者を長時間放置するなどの放棄・放置が1件だった。
市の担当者は「虐待防止に向けた改善計画を進めてもらうため、どういう行為が虐待なのかを病院に伝えている。また、提出された計画通りに対応しているかも確認していく」としている。