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横浜開港の象徴として親しまれている通称「たまくすの木」(中区日本大通の開港資料館中庭)。その維持管理に向け、同館を運営する横浜市ふるさと歴史財団は、日本樹木医会神奈川県支部=秦野市=と8月1日に協定書を締結した。たまくすの木の維持管理を通して、開港の歴史啓発を進めたい考えだ。
たまくす(玉楠)の木は、日米和親条約締結の地に残るタブノキ。横浜開港を象徴する地域文化財として1988年に市の地域史跡に登録されている。
江戸時代、横浜が小さな農漁村だったころから存在し、1854年の日米和親条約締結でペリー提督に随行した画家ハイネによる『ペリー提督・将兵の横浜上陸図』にも描かれている。
1866年の大火、1923年の関東大震災と2度の災害に見舞われ樹形が変わるほど焼失したにもかかわらず、残った根から再び芽吹き成長していった。30年6月に現在の位置(旧英国領事館前)に植え替えられた。
同財団によると、昨今の突発的な気象の変化などを踏まえ、開港資料館の植栽について日常的に助言やメンテナンスを受けられる体制を整備する必要性があるとして、昨年度に日本樹木医会神奈川県支部に樹勢診断を依頼。その後、樹木医会と相談する中で、歴史財団から協定を提案した。
現在、山下公園通りや元町、中華街へと誘客する文化観光の拠点として開港資料館を位置付ける事業が、文化庁の補助金を得て進められている。
旧英国領事館の歴史的建造物の修繕などに加えて、開港の歴史的景観に欠かせない、たまくすの木の維持管理も行っていく。協定書では敷地内のヒマラヤスギなども対象となっている。
今後は書面の内容を踏まえ、市民へのたまくすの木、および横浜開港の歴史の普及啓発活動を実施。そのほかたまくす周辺の土壌改良にむけた縁石の除去や土の入替作業、維持管理にかかわるボランティア育成の助言・指導、同支部が主催する樹木医などを対象とした研修の場として、たまくすの木を活用する計画だという。