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神奈川県内の映画館で、本編が始まる前に予告編などとともに放映されていた行政広報の「神奈川ニュース」。その製作を手掛けていた団体の歴史をまとめた本が3月に出版された。著者の細見葉介さん(39)=西区戸部本町在住=は「県内各地の世相や歴史を伝えてきた映画協会の役割を知ってもらえたら」と話す。
細見さんが出版した本『神奈川ニュース映画協会の時代』は、四六判の167頁で税込2200円。(株)なまためプリント=中区南仲通=内、出版部の公孫樹舎から発行された。
「神奈川ニュースとは何か」から始まり、誕生前史から戦後復興期、高度成長期、バブル時代、解散まで時系列で57年におよぶ映画協会の歩みを紹介している。また、作品製作を手掛けた個性豊かな映像作家たちも取り上げた。巻末に挿入された年表には、協会の活動と製作された映画、ビデオが記載されている。
「神奈川ニュース」は約4分のニュース映画。1950年設立の県の外郭団体・社団法人神奈川ニュース映画協会(2007年に解散)が製作していた。
県内の祭りなどをはじめとした行事や公共事業の進捗、また公衆衛生や社会福祉、交通安全の呼びかけなど多岐にわたる広報を担っていた。最も多い時期には県内200のスクリーンで放映され、00年代も30余のスクリーンで流れていた。
細見さんは、高校生の頃からドキュメンタリー作品に興味を持ち、進学した横浜市立大学では映像製作のサークルに所属。以前から映画の本編前に流れたレトロな書体の「神奈川ニュース」に漠然と興味があったという。興味が高じて大学生の頃には撮影現場を見学に訪れたこともあった。
映画協会の歴史を一冊にまとめようと思ったのは2020年。当時勤務していたテレビ神奈川は地元のテレビ局ということもあり、過去に神奈川ニュース映画協会と関係があったことを知る。その縁もあり「神奈川ニュース」を調べだすと、協会史はなく、残された情報は限られていたという。
そこで20年の年末から本腰を入れ、休日には県内各地の図書館などで資料収集。記者職の仕事の合間を縫って、21年春からは関係者への取材も本格化させ足かけ3年でまとめ上げた。細見さんは今後も未見の映像作品探しを続ける。同書の問い合わせは公孫樹舎【電話】045・641・8080。