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関内地区の居留地に住む外国人の持ち込んだ西洋家具の修理から始まり、日本の洋家具発祥の地と言われる横浜。元町周辺で発展した「横浜家具」の伝統を正当に受け継ぐダニエルで椅子張り一筋30年。西区岡野にある同社横浜工場の工場長として職人をまとめる。
電子機器の製図の仕事をしていた父の姿を見て「手に職を」と製図の専門学校に進んだ。そこで初めてかたちにしたのが椅子だった。組み立てから縫製、仕上げの工程までを全て1人で手がける楽しさに目覚め、卒業後ダニエルに入社。しかし最初は営業職に配属され、空き時間を見つけては工場の窓から職人の作業を眺める日々が続いた。その後熱意が認められ、晴れて椅子張り職人に。1級技能士として装飾技法の研究や旧吉田茂邸のソファなどの文化財の復元、技能検定委員も務める立場だが、「日々修行」とおごることなく技術に磨きをかけている。
同社ではオーダー家具のほか「家具の病院」と称し、椅子やソファの修理も行う。素材や色など顧客の希望に合わせて一つ一つ丁寧に修理した椅子は、新品以上の仕上がりだ。職人の腕一つでその座り心地は一変するため「失敗はできない。お客様の期待に応えたい」と話す。布やレザーの代わりに自宅で眠っていた着物の帯を使った椅子張りができるのも、全ては高度な技があるからこそ。自らが持つ伝統技術を現代社会のニーズにあわせて発展させることも、職人の使命と考える。「横浜家具の技術と伝統を、次世代につなげていきたい」