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着物は解いて縫い直すことができ、つなげれば反物になる。色を変えたり、型を替えることもできる再生可能なエコな衣類。仕立て直せば贈答品としても喜ばれる希少な衣類と言える。
「流行廃りもありません。普段着であっても品格を備えたものであり、さまざまなシーンで華を添え長く着続けられるものです」とその魅力を語る。
南区に生まれ、和裁士である父の仕事を身近に感じながら育った。神奈川工業高校でデザインを学び、その道に進むことを考えたが、父の勧めもあり三代目になることを決意。5年にわたる修行を経て横浜に戻り、1994年には「全国和裁技術コンクール」で最高位の内閣総理大臣賞に輝く。99年には上皇后さまの着物の縫製も担当した。
2004年に「山本きもの工房」(18年に「やまもと工藝」に屋号変更)を立ち上げ、一級の技術を惜しみなく伝える仕立て教室や茶の湯の袋物教室、着付け教室も主宰する。13年にはファッション業界の新聞社から『新・和裁入門』を刊行。国の重要無形文化財「久米島紬」の大使にも任命され、現在は女子美術大学の文化財修復プロジェクトで縫製に携わる。
和裁士として歩みをはじめたころから、内職業のイメージを打破したいという思いは変わらない。
着物の袖の切れを防ぐための独自技術考案や中高生の職場体験などにも取り組み、和裁士の技術向上や活躍の場の拡大に貢献してきた。「和服は仕立て直すことで形も思いも生まれ変わります。持続可能を掲げるSDGsにも通じますね」と話した。