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横浜市はSDGsの取組や環境・社会課題を解決する事業の資金調達として、市として初となる「ESG債」の発行に向けた方針を発表した。市場の投資ニーズを捉え、新たな財源確保と市民啓発に活用していきたい考えだ。
ESG(Environment/Social/Governance)債は、温暖化対策や福祉などの課題解決に向けた取組に資金の使途を限定した債券。国内外で広がり、年々発行が増加している。自治体が導入するESG債の種類は、使途を環境課題解決に限定した「グリーンボンド」が主流だが、横浜市では現状の施策規模にあわせて、環境と社会課題の両方に調達資金を充当する「サステナビリティボンド」を採用した。金融機関など機関投資家が対象。10月14日に発表した発行方針の中で、調達した資金は相互直通運転「神奈川東部方面線(西谷駅〜日吉駅)の整備」で環境に配慮したクリーン輸送の実現や、保育所や高齢者施設、児童福祉施設などの整備事業に充てると公表している。
自治体発行の地方債は信用度が高い上、社会的に意義のある投資ということで企業がCSRの一環として購入することも多いという。自治体のESG債は、東京都が2017年度に発行したのが始まりで全国に広がり、20年度に神奈川県が導入。川崎市は昨年度グリーンボンドを政令市で初めて発行した。初年度は50億円で起債したところ約690億円と14倍近い応募があり、今年度は100億円で起債し、即日完売している。
市の新たな市債発行に向けた動きは、こうした市場のESG投資ニーズの高まりが背景にある。担当者は「資金調達の多様化や投資家層の拡大」を期待する一方、「資金の使い道や社会課題を『見える化』することで、SDGsの取組や市の事業に対する理解促進にもつなげたい」と話した。市では今年度中の発行を目指しており、発行額などの詳細は、他自治体の状況や投資家動向を踏まえて決定される。