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高齢化の進展などで増加傾向にある救急出場件数に比例し、市内の転院搬送件数が増加傾向で推移している。市では、緊急性の高い事案に確実に消防救急車が対応できるよう、横浜市救急業務検討委員会において、ガイドライン改定に向けた議論が重ねられている。
2005年、横浜市内の年間救急出場件数は当時の過去最多を記録。転院搬送件数も全体の6%を占める1万311件となった。これを受け市は翌年に「転院搬送ガイドライン」を制定し、07年には7122件と転院搬送件数を減少させた。
市消防局の担当者によると、救急出場件数全体に占める転院搬送の割合は全国平均を下回る5%前後で推移。一方で、転院搬送件数は増加傾向で推移しているという。
傷病者の転院搬送は、緊急性がない場合は搬送元医療機関所有の救急車のほか、横浜市患者等搬送事業認定事業者やタクシー会社などにより行う。また、「転院時は適切な基準より高い判断をするオーバートリアージが行われるため仕方がない部分もあるが、中には緊急性が乏しいと考えられる要請もある」と担当者は話す。市は救急隊の増隊(10月から84隊)などで対応しているが、21年の救急隊現場到着時間は平均7・9分と10年で1分以上遅くなっている現状や、救急隊の長時間拘束などが課題だ。
ガイドラインの制定から15年以上経った今、市は、横浜市救急業務検討委員会において、転院搬送依頼書の要請基準の欄に「緊急に処置が必要」「消防機関の救急車以外の搬送手段が活用できない」などのチェック項目を設けるなど、改定に向け議論を続けている。
横浜市医師会会長で同委員会の委員長を務める水野恭一氏は「医師会や病院協会会員、これに所属していない医療機関へも継続的な周知が必要だと考える」と話す。
提言は今後、山中竹春市長に提出される予定。担当者は「23年4月から新たなガイドラインを運用したい。適正な利用で、市民サービスの低下を防いでいきたい」と話している。