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今年で完成100周年を迎えた三溪園=中区本牧三之谷58の1。その内苑の中心的な建造物で、江戸時代初期の紀州徳川家の別荘として建てられた重要文化財「臨春閣」の保存修理がほぼ完了した。屋根のふき替えや耐震補強を実施。9月17日から特別公開される。
臨春閣は、日本庭園を臨むように第一屋、第二屋、第三屋(第三屋のみ2階建て)が並ぶ江戸時代初期の建造物。当初は豊臣秀吉が建てた聚楽第の遺構と考えられていた。明治39(1906)年に三溪園の創設者・原三溪が大阪の豪商と購入の交渉をはじめ、移築が完了したのが大正6(1917)年。室内は数寄屋風書院造りで、各部屋から同園の三重塔や周辺の景観を眺めることができる。
数寄屋造りは、自由度のある風流な建築意匠ということもあり、城でいえば本丸にあたる「住之江の間」(第二屋)の天井をはじめ、各所に遊び心のあるデザインが散りばめられている。
今回の修理は2018年から5年にわたった。檜皮葺屋根(ひわだぶきやね)と杮葺屋根(こけらぶきやね)の補修を主目的に、耐震診断と補強工事が行われた。同園を運営する三溪園保勝会の職員は「これまでと変わらない姿を残したことが、今回の補修工事の一番のポイント」と話していた。
同園副園長を務める村田和義さんは、明治初期は廃仏毀釈もあり伝統的なものを軽んじる風潮があったと指摘。「そのような中、原三溪は日本の伝統文化を大事にした」と話し、臨春閣もその一環だったと説明した。
特別公開は9月25日まで。見学は指定された見学通路(主に縁側)からで、室内に入ることはできない。時間は午前10時(17日のみ午後1時)〜午後4時30分、観覧無料。入園料は大人700円、小中学生200円。問い合わせは【電話】045・621・0635。