丸りおながマイルートと一緒に横浜の商店街を巡るこのコーナー。
3回目の今回は、全長1.2kmにもわたって新旧の多彩なお店が並ぶ「イセザキ・モール」へお出かけです。JR関内駅から吉田橋を渡ったところの「ウェルカムゲート」がイセザキ・モールの入り口。
「ウェルカムゲート」から1丁目・2丁目・・・そして7丁目まで続くイセザキ・モール。冬はイルミネーションで飾られて街の表情も変わります。
今日はイセザキ・モールの中でどこに行こうかな〜
“伊勢佐木町”と検索してみると、昭和に大ヒットした伊勢佐木町ブルースで知られる青江三奈さんや、ゆずさんなど時代を越えた音楽の情報がたくさん出てきました。ここ数年、私たちの世代では昭和や平成に流行ったファッションや音楽を「レトロカルチャー」として楽しむのが流行っています。
いつの時代も、私たちに楽しみを与えてくれる映画や音楽などのエンターテイメントを感じることができる場所を今日は「レトロカルチャートリップ」と題してこの伊勢佐木町で見つけてみましょう!ウェルカムゲートを過ぎて少し歩くと、見慣れたお店の文字が。カステラで有名な「横濱 文明堂」さんがありました。
子供の頃から、「カステラ巻」が大好きでよく食べていました!ふらっとお店の中へ入ってみると、お店の奥に喫茶店があるようです。散策早々だけど、香ばしい香りに誘われて店内へ入ってみました。
喫茶店の名前は「文明堂茶館 ル・カフェ」。お店の奥には大きなステンドグラスが。内装もレトロクラシックな造りになっています。昭和8年に横浜店としてこの地に誕生した文明堂が、昭和57年にリニューアルした際に喫茶を併設したそうです。オープンして35年以上経ちますが、鹿鳴館時代をイメージした華やかさは喫茶が開店した当時のままなのだとか。
ル・カフェで人気のメニューをお伺いすると「パステル」が一番おすすめで一番人気のメニューなのだそうです。早速パステル2枚と飲み物のセットを注文しました。
注文してまもなく、丸いパンケーキのようなこんがりと焼けたお菓子が出てきました。どら焼きの皮を焼いた、焼き立てのお菓子です。お店に漂っていたのはこのパステルの香ばしい香りだったんですね。
パステルのお供には、お好みで「バター」「シロップ」「ホイップクリーム」を選ぶことができます。まずは何もつけずに、そのままの味を試してみましょう。
ナイフで切ろうとすると、生地が弾力があって中々切れないです。どんな食感なのか今から楽しみです。冷めないうちにまずはひとくち・・・
お、美味しい・・・。焼き立てで外側はしっかり香ばしく焼けているのに中はしっとりとして弾力があって、もっちりしています。これは何枚でもペロリと行けちゃいそう!
バターのしょっぱさもパステルそのものの甘さにぴったり合うし、シロップは自然な甘さを味わえるし、ホイップは牛乳の味が爽やかでさっぱりしていておかわりしたいくらい・・・。
文明堂といえばカステラのイメージが強かったけれど、喫茶でしか味わえない焼き立てのパステル。どの組み合わせが好みか、是非みなさんも文明堂喫茶 ル・カフェさんへ立ち寄ってみてください。
伊勢佐木町1・2丁目地区商店街振興組合、理事長の加藤昇一さんにお話をお伺いしました。
イセザキ・モール1・2St. は昭和3年に日本で最初の「歩行者天国」(当初は平日は夕方から・土日は午後から)が始まった場所なのだそうですね。その流れを汲んで、昭和53年には街の再開発事業で「イセザキ・モール」が実現したのだとか。確かに、バリアフリーで、24時間歩行者天国で散策しやすいですね。街路樹の木陰や休憩に便利なベンチなど、緑と太陽に囲まれたショッピングモールはまさに街路樹のある買物公園!いつ訪れてものんびりとした時間が流れていますね。
新型コロナウイルス感染症の流行以降、新たに取り組んだこととしては、商店街内の加盟店連絡を従来手渡しで行っていた物をオンライン化したり、流行直後のマスクが品薄の頃にマスクを加盟店へ各店100枚ずつ配布されたり、加盟店へ助成金や最新の情報提供を迅速に行なったそうです。また、商店街利用者には、安心して買い物ができるように商店街内放送での「マスク着用・手洗い消毒・3密回避等」のお願いを終日放送したり、感染拡大防止取組をお願いした各種大型ポスターの商店街の掲示板へ掲示されたそうです。加盟店、利用者どちらにも安心できる取り組みをされているのですね。
そんなイセザキ・モール1・2St.をこれから訪れる方に、ぜひメッセージをお願いします!
フォークデュオの「ゆず」はこの街から羽ばたいて行きました。「ゆず」は今でも“この街が原点”と言います。無名時代から旧横浜松坂屋前で路上ライブを行い、イセザキから大きく羽ばたいていった「ゆず」。この場所は彼らの原点であり、伝説はいまもなお語り継がれています。イベントも春の大道芸、夏のみこしパレードや秋の陶器市をはじめ年間を通して開催しています!2020年はイベントは止む終えず中止となりましたが、冬の名物 イルミネーションイベントは開催されます。音楽や芸術、様々なカルチャーが時代をつないできた、イセザキ・アートストリート-
関内駅から徒歩1分、ファッションからフーズ&サービス迄、伝統ある老舗や人気のナショナルチェーンなど120店舗が集結。どの世代の方も居心地良く過ごすことができる「イセザキ散歩道」にどうぞお出かけください。
加藤さん、お話をお聞かせいただいてありがとうございました。
イセザキ・モールを引き続き、歩いていきましょう。1丁目、2丁目を歩いて行くと大きな通り(横浜駅根岸道路)に出ます。横断歩道を渡ると、そこから伊勢佐木町商店街の3丁目へと続きます。
街並みも少し変わってきました。引き続き道はフラットなので歩きやすいです。薬局や理容室、食品店や飲食店などさまざまなお店が目に入るようになりました。賑やかな雰囲気も少し落ち着いてきましたね。
少し歩くと、大きなモニュメントのようなものが見えました。なんだろう?
近づいてみると、ピアノの形をした石碑に「伊勢佐木町ブルース」と書いてあります。さっき検索して見かけた「伊勢佐木町ブルース歌碑」です!今から約20年前の2001年に協同組合伊勢佐木町商店街によって建てられました。この伊勢佐木町の街にとっても思い入れの強いソウルソングなんですね。
正直なところ、私はヒットソングを特集した歌番組などでたまに目にしていた程度なので実際に歌詞を見ても、サビのフレーズ以外がなかなかピンと来ません・・今度ゆっくり聞いてみよう~!
赤いボタンがあったので、出来心でポチっと押してみると・・
なんと、「伊勢佐木町ブルース」の音楽が流れ始めました!
びっくり・・・!結構大きな音でたっぷりと曲が流れました。歌碑に気を取られていたら、その後ろには大きな看板がありました。
伊勢佐木町ブルース、青江三奈、1968年1月5日発売と書いてあります。1968年は昭和・・・昭和43年。昭和歌謡曲を代表するご当地ソングとして当時は大ヒットしたと教えてもらいました。実際のレコードのジャケット写真を模した大きな絵がこちらを見つめています。
思わず私も、
同じポーズ(青江三奈さんの表情も真似てみました)
今度は伊勢佐木町ブルースのメロディ、そして歌詞のフレーズもしっかり体に染み込ませてまた来よう。
看板の横には、ガラス張りで不思議な形をした建物がありました。なんだろう・・?
CROSS STREETというブルーの看板が目印になっています。
CROSS STREETは2010年にできた木造のライブハウス。音楽と縁が深い伊勢佐木町とあらゆる芸術が発信されて、様々な人と交差(CROSS)して発展していくことを目的として作られた芸術文化の発信拠点。
このイベントスペースの名前「CROSS STREET」の名付け親は、先ほども名前があがった「ゆず」のお2人なのだそうです。歴史のある歌謡曲も、ゆずのように羽ばたいていったストリートミュージシャンも大事にしている街なのですね。
音楽やアートなどの芸術文化を大事にしている街、伊勢佐木町。他にもそういったカルチャーの発信地などはあるのかな?マイルートでこのあたりの地図をみてみると、少し歩いた先に「シネマ」という文字が地図上に見えました。
「シネマ・ジャック&ベティ」とありますが、これは映画館なのかな?それとも映画館の名前のようなカフェとかなのかな・・。気になるので行ってみましょう。
商店街のメイン通りを曲がって、大岡川方面に進んだところに映画のポスターやのぼりが見えてきました。建物沿いに曲がると、映画館がありました!
商店街のメイン通りの裏手の静かな住宅街の中に映画館があるんですね!
上映中の映画のポスターが貼ってあってさらに入り口にはたくさんの映画のチラシがラックに詰まっています。平日の昼間ですが行き交う人も多くて、ここは映画好きの方にとっては知る人ぞ知る映画館なのでしょうか。
入り口のエスカレーターは、まるで映画の世界へいざなってくれるような、別世界へのエントランスに感じられます!ちょっと気になるので中へお邪魔してみましょう。エスカレーターを昇ってすぐチケットカウンターや物販ブースがありました。フロアマップを見てみると、
館内の左右にジャックとベティという2つのスクリーンがあるのですね。1952年にオープンした「横浜名画座」が発祥となっている歴史の長い映画館なのだそうです。
(スクリーン「ベティ」)
ジャックとベティの2つのスクリーンで上映される作品には、ミニシアター系の新作映画ももちろん、名画座として歴史に名が残る名画を特集上映したりされているそうです。
チケット売り場では、今日の上映スケジュールが掲示されていました。すごい・・1日に分刻みの入れ替えでジャンルも国も違う映画がたくさん上映されているんですね。カウンターの横にはグッズ売り場もありました。シネマ・ジャック&ベティオリジナルグッズや上映作品の関連グッズなどが販売されています。そしてショーケースには、パンやスイーツなどが並びます。
そこにずらりと並んでいる瓶が・・・
オリジナルサイダー・・・?
よく見てみると、瓶のサイダーのラベルに「JACK&BETTY」の文字が。赤と黒をベースにしたフィルム模様のラベルがお洒落ですね!
こちらのオリジナルサイダーはこのシネマ・ジャック&ベティの近くの末広町にある、明治34年創業「横濱オリツルサイダー」を販売している横浜坪井屋さんとコラボレーションしたオリジナルサイダー。
休館を余儀なくされた今年の春に商品は完成していたものの、販売できる機会がなく、営業再開時に販売できたことで営業再開のシンボルとして、来館の記念に購入できたり、スクリーンの中でも味わうことができます。
(スクリーン「ジャック」)
事前にオンラインでチケットを購入できるので、ぜひホームページから最新情報をご確認ください。
ジャック&ベティを出て、またメイン通りに戻ると喫茶店が目に入りました。COFFEE POEMと書いてあります。喫茶店でしょうか。休憩に立ち寄ってみましょう。
手のひらにコーヒー豆が描かれた可愛らしいロゴが迎えてくれたのは「コーヒーハウス ぽえむ」さん。
店内には、テーブル席とカウンター席があります。テラスにも席があって、待ち合わせにもちょうど良さそうですね。お店の中は決して広くはないですが、カウンターごしのカップの棚や、お店の方とお客さんとの距離も近く感じられて過ごしやすい雰囲気です。
ちょっと大人になったつもりで、カウンター席に座っておすすめのコーヒーをオーダーしました。
お店のメインのブレンドはジャーマンロースト。焙煎されて2日以内にお店に届いた豆を、オーダーが入ってから挽いて目の前でドリップしてくれます。豆の香りが店内にふわっと広がります。散策の疲れも癒されます。
ドリップしている間はお店の方と会話が弾みました。コーヒーのプロであっても、ハンドドリップで1杯1杯作られるので、人によって煎れ方が違うようです。「私と息子でもコーヒーのドリップが違って、味わいや口当たりも変わるから、お客さんによって好みが分かれるのよ~」と笑顔でお話しくださったのは、オーナーの中山さん。
ゆっくりと時間をかけてドリップされたブレンドコーヒーを、いざ!いただきます。
煎れている時とはまた違う香りが漂ってきました。新鮮な香りと言っていいのでしょうか、思わずカップを持つ手が止まって飲むのを忘れちゃいそう。
ひとくち、ふたくちと口当たりが変わって、まろやかさやとろみ、香ばしさや酸味が口の中に広がってついつい飲み干してしまいそう。丁寧にハンドドリップされたコーヒーだからこそじっくり味わわないともったいないですね。
「ぽえむ」さんには軽食のメニューもあったのでランチも兼ねてミックスサンドを注文してみました。
ボリューム満点!そしてみずみずしいレタスがたっぷり挟まったミックスサンド!
喫茶店のミックスサンドは、どの喫茶店でも人気のメニューですよね。シャキシャキとした食感とふわっとしたパンのサンドイッチは、ジャーマンブレンドにぴったりです。
お休みの日はゆっくりとこういう喫茶店で本を片手にコーヒーを楽しみたいですね。ぽえむさんには、ブレンドコーヒーはもちろん、ブランデーやバター、チョコミントなどを使ったアレンジコーヒーのメニューが100種類以上あるのだそうです!
コーヒー専門店だからこそ、コーヒーの美味しさを色々と楽しめる喫茶店「ぽえむ」さん。街に行き交う人たちに親しまれるあったかいお店でした。
お腹もいっぱいになって、コーヒーでホッと一息ついたところで、散策も後半戦。関内方面に戻ってみましょうか。
イセザキ・モールの真ん中くらいに戻ると、交差点の向こう側にシネマリンという文字が見えました。シネマ!また映画館でしょうか。ちょっと向かってみましょう。
大通りを少し入ると、「横浜シネマリン」の看板が。外から見るとごく普通のビルなのでここに映画館があるの?という外観です。
どうやらこちらの映画館は地下にあるようです。階段を降りて行ってみましょう。
階段を降りて地下のフロアに入ると、中は白い壁と高い天井で外からは想像がつかない館内です。シンプルで都会的な映画館のロビー空間が広がっています。
こちらの「横浜シネマリン」さんはスクリーンが1つのミニシアターのようです。館内にお邪魔すると、シネマリンの代表の八幡温子さんがいらっしゃったので、お話を伺ってみました。
外の看板の「シネマリン」の文字はどこかレトロな雰囲気でした。この映画館は歴史が古いようですが館内はとても近代的な造り・・・この不思議な印象はどうしてなのでしょうか。
お話をお伺いすると、1954年に伊勢佐木町に沢山映画館があった時代にここシネマリンの前身である吉本興業が経営する「花月映画劇場」が誕生。1963年に経営難で閉館したのち、新たな経営者が1964年に「イセザキシネマ座」という劇場名で再スタートし、1989年に「横浜シネマリン」になって今に至るそうです。
「横浜シネマリン」という名前になってからは30年以上も経つ歴史のある映画館なのだそうです。昔の映画館といえば、地下にある映画館も少なくないそうです。大型のシネコン施設に慣れてしまっている私にとってはとても新鮮でした。
長い歴史の中にも何度か存続の危機があったようで、その度にシネマリンや横浜の映画文化への熱意を持った人たちが代替わりしてバトンを繋いできたそうです。八幡さんがこのシネマリンの代表になったのが6年前。もともと映画サークルに所属していた八幡さんが横浜の芸術不動産リノベーションに関わる助成事業を活用し、そして八幡さんの想いと共に現在の横浜シネマリンとしての施設が再スタートしたのだそうです。
こだわりは、地下ならではのシアターの醍醐味である音響システム。通常ライブハウスで使用するような音響機材や、改装前はスクリーン直下まで座席だったシアター内にステージを設けて、トークショーやイベントなどを開催して映画が好きな方やこれから映画を好きになられる方にも楽しんでいただけるようなシアターの造りにされたのだとか。
八幡さんのお話をお伺いしてみて、なんとなく今日の散策に共通するものを感じました。横浜シネマリンの近くに、市営バスの「長者町5丁目」バス停を発見。今日はここからバスに乗って桜木町駅まで帰ろうと思います。
市営バスの利用に便利な「みなとぶらりチケット」はマイルートアプリからその場で購入できます。マイルートで「みなとぶらりチケット」の画面を乗務員さんに提示するだけで乗車することができます。「みなとぶらりチケット」は市営バスはもちろん、ベイエリアの市営地下鉄も乗車できる1日乗車券です。「みなとぶらりチケット」の提示で特典が受けられる施設や店舗もありますのでおでかけのときは、マイルートから購入してみてくださいね。
伊勢佐木町は、歌や映画、アートなどあらゆるエンターテイメントカルチャーが街と共に根付いていて、そこに集う人たちも代替わりしながら、大事に大事に街の歴史を受け継いでいらっしゃるんだなと感じました。
商店街は店があるから歴史が続くのではなく、そこに住んだり集う人たちがいるからこそ歴史が続いていくのですね。
とても温かい気持ちになれたイセザキ・モールの散策でした。
※お店の営業時間などは変更になっている場合があります。
事前にお調べになってからお出かけください。
・写真と文 横浜DMC(YDMS株式会社)